今回も前回に引き続き『おわりの美学』よりお気に入りの章についてお話します。
手紙のおわり
『三島由紀夫レター教室』や、遠藤周作さんの『十頁だけ読んでごらんなさい。〜略』を読んだ時にも感じましたが、手紙を書くという行為には人との関わり方の本質が現れることをあらためて感じました。
それゆえに、手紙を書くことから学べることはとても多いです。
レター教室に続いてまたまた三島由紀夫の手紙に関する内容ではありますが、今回は小説家としてまた新たな側面から「相手を思いやること」の本質を学ぶことができました。
「結びの文句」に学ぶ人との距離感
手紙は一方的に描かれるものであるゆえ、独りよがりにならないように気をつけることが大切です。
この章ではいくつかの例とともに手紙の結びについて書かれています。
まず良い例として、
「またお目にかかる日を楽しみに」
→押し付けがましくない、よい結びの文句。
約束を強いないで、人生でもう二度と会う日はないかもしれないが、この前会った時は楽しかった。
そしてよくない例として、
「またぜひお目にかかりたいと思います」
→少し脅迫じみている。
こんな風にいくつかの結びの例と共に、そこから読む側がどのように感じるかということに重点を置いて解説してくれています。
見えない愛こそ本物の愛。
結び文句から読み取れる感情を考えていくと、たったの一文に込められた優しさの奥深さを感じます。
この章から学んだ人間関係における教訓は、
相手との距離感を大切にすることが最大の思いやり
ということです。
最初の例に出ていた「またお目にかかる日を楽しみに」のところで書かれていたように、大好きな人がいたとして、その人と過ごした時間がとても楽しくて、またすぐにでも会いたいという気持ちが募りに募っていたとして、
それでも自分の気持ちを抑えて
「あなたがどう感じていたかはわからないけれど、それでも私はとても楽しかったですよ。」
という気持ちを伝えるだけに留めておく。
ただがむしゃらに「好きだ」とか「会いたい」というこちらの気持ちを押し付けるのが愛ではなく、相手の気持ちを考慮して尊重できるかがやっぱり本当の愛なんだなぁと、改めて感じました。
こうゆう相手との距離感は、一発でうまく図ることは難しいと思いますけど、いろんな人と関わる中で上達していけるように、「見えない愛」を与えられる人になりたいなぁと、しみじみと感じた章でした。
まとめ
多くの手紙とは読み終わると忘れてしまうものだけど、それでも読み終えた私たちは忘れがたい思いを残すことがある。
それが手紙の結び文句であり、だからこそ、このたった一文を真剣に考える価値があります。
そして、そこにどれだけ相手を思いやる心を込めることができるかが手紙の質を左右することにつながります。
そんな、「手紙のおわり」を考えることを通して、他者への優しさの表現力を磨いていく練習をするのもおもしろそうだなと感じる内容でした。