【読書】読むたびに大切な友人を一人失う物語『悲しみの歌』(著:遠藤周作)

今回はもう「まとめ」とかではなく、ただただ私の大好きなこの作品についてしゃべらせていただきたい。笑

この作品の紹介については別の記事でまとめておきたいと思いますので、どんな物語なのか簡単に知りたいという方はぜひ先にそちらを読んでいただければと思います。
(更新しましたらリンク貼ります)

そして、本記事は後半にネタバレ要素を含みますのでご注意ください。

この作品が大好きな理由

今週、わたしの大好きな大好きな小説である『悲しみの歌』を約1年ぶりに読み返しました。

去年この作品を読んだときは嗚咽レベル泣きました。笑

小説でそこまで泣いたのは初めてだったので、それがものすごく記憶に残っていて。

それ以降、いまだにわたしの好きな小説ベスト1の座を他に譲らない作品です。

それで今回は、

「結末がわかっていてもまた泣けるのかな?」
「なんか最近泣いてないから泣きたいな。」

という思い付きから読み返してみました。

結論から言うと、ぜんぜん泣けませんでしたw
(一か所、思わず一筋の涙が流れてしまったところはありましたが。)

正直泣けない自分がちょっと寂しかったです。
もちろん読後の気持ち的にすごく悲しいのだけど。

結末知ってるか知らないかだけでここまで感じ方は違うのか?ってゆう疑問から、
あれだけ号泣した去年の自分ってもしや病んでたのか?w
とちょっと思ったりもしました。笑

しかしそれでも何度読んでも、いい。
やっぱり素晴らしい。
ほんとコレ好きだわ、、、

と、読みながら、自分のこの作品に対する愛を改めて感じました。笑

勝呂という人間が本当に好きなんですよね。
タイプなんですよ。

だから多分わたしはこの『悲しみの歌』という作品が大好きなんだと思うんです。

勝呂の人物像にそこまでのものを感じない人にとっては、もしかしたらそんなにハマらない作品なのかもしれないなとも思いました。

最近わたしは本当に「偽善」が嫌い。
「偽善」には当人の利がチラついて見えるから。
醜いと感じるんです。

でもなんで私がこんなに「偽善」が嫌だと感じるのかって言ったら、

おそらく『沈黙』(同著者)でロドリゴがフェレイラに対して「憎悪の念と侮蔑の念を抱いた」理由として、
「このフェレイラの中に自分の深傷をそのままみつけることができるから」と書かれていたのと同じで、
自分の中にそういう部分があることに気づいているから、そういう自分が嫌だから、醜いと感じているから。

だから、勝呂が偽善を嫌い、だれの承認も求めずにたんたんと他人の痛みを分かち合い、そっと手を差し伸べる姿が私にはすごく魅力的に見えるのだと思います。

そして、そんな勝呂の痛みを分かち合いたい、和らげたいと、何度読んでもそう思ってしまうのです。

 

2回目読んだら「自分の成長」に気がついた

今回2回目を読んでみて気づいたことが、自分の成長を感じられたことでした。

どういうことかというと、初めて読んだとき、この物語のヒールである折戸に対して、ただただ怒りの気持ちしか湧き起りませんでした。

恨みそうになったほどに。笑

お前さえいなければ、勝呂は、、、うぅ、、、泣

って感じで。笑

それが2回目を読んだ今回、折戸を案ずることができた自分がいました。
彼もまた勝呂と同じ道をたどってしまわないだろうか、と。

もちろん何度読もうと折戸に対して
「本当にうざいな、嫌いだわ」
とゆう感情ではあるんですが、
勝呂の死を聞いた時に動揺している描写がすごく印象的だったんです。

一度目に読んだときは勝呂の死がただただ悲しすぎて、
もうそんな折戸のことなんて全く頭に入ってきていませんでした。

折戸が反省していたか、開き直っていたかなんて、どうでもよくて覚えていませんでした。
(読後2,3日は完全にお葬式に参列した気持ちでしたから。)

だけど、1年たった今は折戸を見る余裕ができていた。
それはただ単に勝呂が死ぬ結末を知っていたからかもしれないですが。

でも、折戸が「勝呂の死は自分のせいではない」と自分に言い聞かせている姿は、それまで不都合が起こるたびに開き直っていたものとは明らかに違って見えました。

どんなに憎い相手だとしても、その人を少し見つめることができたことは成長なのかな、と。
(当事者になったときにそこまで冷静でいられるかは別ですが、、、)

そして、そんな悲しいことが繰り返されることのないように、という、1回目には見えなかった著者のメッセージを感じて、やっぱ深いなと地味に感動しました。

何度でも読み返したくなる。

そして何度読み返しても、
私は勝呂が大好きで、
何もできない自分を不甲斐なく思い、
「いかないで、、、」と叫ばずにはいられない。。。

あーー。また悲しい。

やっぱり心が動く。
そしてここまで人の心を動かせる表現力やストーリー構成が本当に、この作品の、著者の、すごいところだなと実感しました。

『海と毒薬』ももう一度読み返したくなっちゃった。