【読書】手紙の書き方を通して学ぶ、自分も相手も楽しむ会話術『三島由紀夫レター教室』(著:三島由紀夫)

今回は以前から気になっていた
『三島由紀夫レター教室』を読みました。

今の時代、手紙を書く人なんてほとんどいないですよね。
わたしもほとんど書きません。

友達の誕生日にメッセージカードを付ける程度です。

でもそれすらどこか形式ばっている気がして、

書きながら
「コレもらって嬉しいだろうか?」
などと考えてしまう冷めた自分がいます。

寂しい29歳です。笑

では、なぜこの本を読もうと思ったのか?
それは、、、つまらなそうだと思ったからです。笑

しかし作者はあの三島由紀夫。

手紙というあまり実用的ではないテーマで何を語ってくれるのだろう、
という興味と期待の一心で読んでみました。

結果、久しぶりに「これは読んでよかった〜」と感じた作品でした。
さすがでした。

この「三島由紀夫レター教室」は、単なる手紙の書き方講座ではございません。
いうなれば「魅力的な人になるための教室」です。
(ネーミングセンスw)

正直、今の時代で手紙を書くということって、結構リスキーな行為だと思うんですよね。
なぜなら、デジタル化が進んで人々の価値観が変化しているから。

LINEが普及してライトなやりとりが主流になった今、長文で送られるメッセージは「嬉しい」というより「重い」ともすれば「怖い」という印象すら与えてしまう危険をはらんでいます。

しかし、 「距離感を見誤ればその人間関係は一気に破綻する。」それは古今東西変わらぬ事です。

つまり、この作品が単なる「手紙の書き方」という意味でのレター教室であれば、
今の時代には通用しない作品になっていたのではないかなと思います。

だけどさすがは三島由紀夫先生、そんな薄っぺらなことは言ってくれません。

作中では「手紙」というものを通して、
自分の魅力を発揮して他人と関わるためには何が必要なのか
そんな深い真理について、愉快な登場人物5人の手紙を実例に、
三島由紀夫ならではのユーモラスな表現と共に楽しく教えてくれています。

前置き長くなりましたが、
今回はそんな「三島由紀夫レター教室」から学んだことをまとめました。

作品について

まずは簡単に作品についてご紹介します。

この作品は、5人の登場人物による手紙のやり取りだけで構成された小説です。

恋心、嫉妬、性欲、物欲、裏切り、など、
手紙を通して5人の登場人物の様々な感情が描かれています。

レター教室というタイトルだけあって各手紙には
「古風なラブ・レター」
「身の上相談の手紙」
「陰謀を打ち明ける手紙」
、、、などというように、ジャンルごとの手紙のお手本?的な感じで、実例としてグルーピングされています。

そして最後に「作者から読者への手紙」という形で、手紙が果たす役割に関する著者の考えと、わたしたちへのアドバイスが述べられています。

 

学んだこと

「感情」を話せる人は魅力的

最後の章「作者から読者への手紙」に書かれていた内容から、この作品の作者の一番のメッセージはこれかなとわたしは解釈しました。

てかこの案、めちゃくちゃ素晴らしくないですか?笑

多くのひとにとって他人の身の上話に興味がないの同様に、自分の身の上話も他人にとっては興味のないこと。

それは今やいろんなところで言われているような気がしています。

だけどそれらの結論のほとんどは、
「だから、相手の話を聞きましょう」
なんですよね。

でもそれだと、
「じゃあわたしの話したい感情はイズコへ?」
ってなるじゃないですか。

他人の話ばっかり聞いていてそれが楽しかったらいいんですけど、興味が湧かなければこっちはストレスが溜まる一方なんですよね。

私はそれで人に会うことに疲れた時期がありました。(笑)

今はいろんな本を読んだおかげか、もう少し柔軟に考えられるようになったので、そんな風に感じることはありません。

例えば飲みの席などを思い返してみると、

「何をした」とか「どんなことがあった」とか、他人のそうゆう話は聞いていて「つまらないなあ」だと感じることはあっても、

目の前の相手が感じたことを思いのままに話してくれてる時って、興味ないって感情沸き起こらないんですよね。

むしろその感情は自分にも伝染しているような気がします。

だから感情が溢れ出た愚痴とかは盛り上がるんですかね。笑

だとすると、相手を退屈させず、かつ自分も楽しい会話のポイントってまさにココでにあって、

「嬉しかった」とか、
「楽しかった」とか、
「悔しかった」とか、

そういう自分の気持ちを素直に打ち明けるってことだけを意識して話すと、その時間は自分も相手も楽しい時間になるし、結果として、そんな風に話してる人はたしかに魅力的に見えたりするのかな、と思いました。

これから使っていこうと思っております。

でも暗い感情ばかりは逆効果だと思うから、注意が必要ですね。

他人に対する嫌な感情がダメだとは思わないけど、その場合は自分の「悔しい!」の感情にフォーカスできるといいのかもしれないですね。

実際、本人的には認めたくないところかもしれないけど、客観的に見ると理想を掲げて悔しがってる人の姿ってけっこうカッコよく見えたりしますからね。

戦略的に間違えろ!

もう一つ、おもしろいなと思った考え方がありまして。

それは、氷ママ子という英語の先生をしている夫人からの「英文で手紙を書くコツ」という内容の手紙に書かれていたもので、

(五)ときどきちょっと文法や綴(スペリング)をまちがえなさい。
外国人の手紙や子供の手紙には、これがなくては風味がありません。
people tells me
ぐらいなまちがいはご愛敬で、これを発見すると、受け取り人は、優越感とともに幸福になります。

(引用:ちくま文庫『三島由紀夫レター教室』p112)

ここを読んで、私が高校生のころ韓国アイドルのKARAが大好きだったんですが、
彼女たちがカタコトの日本語で話す姿がたまらなくかわいかったのを思い出しました。
(もちろん最強なルックスで相まってかもしれないですが。)

だけど、頑張って日本語で話そうとしている姿や、大人が簡単な言葉を真剣に間違えることによって、愛嬌が増していたのは事実だと思います。

 

しかし、わたしがこれを読んで学んだのは「対立から降りる」という考え方です。

こちらがバカになることで相手は「優越感とともに幸福」になるのならば、バカになった方が勝ちなんじゃないかなって。

これって外国語の勉強に限らず、仕事などで円満な人間関係を築くうえでとても良い考え方だなと思いました。

ただあまりに度が過ぎると「本物のバカ」だと思われる恐れがありそうなので、そこの塩梅をはかるのは技の見せ所なのかもしれませんね。笑

(ちなみにわたしはこの「people tells me」のどこが間違ってるのかわかりませんw)

 

さいごに

以上が、『三島由紀夫レター教室』から学んだことと感想でした。

まだそんなに大量に小説を読んだわけではないですが、今のところ作家さんの中でも三島由紀夫の文章と考え方は特に好きです。

しかし、彼は頭が良すぎるので私には大概ついていけず、読了できていないものが多いです。(笑)

そんな中でも、この『三島由紀夫レター教室』はポップな物語でテーマもとても分かりやすい上に、たくさんの気付きも与えてもらえるという、なんともお得な作品だという印象でした。

近代小説にチャレンジしたいなと思っている方には特にこの作品か、もしくは『夏子の冒険』あたりから入るのがオススメかなと思います。

現代小説の良さとはまた違った、時代を超えて価値観を揺さぶられるものがある。ような気がします。